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「えーっ、もーっ!
そういうことはさっさと言ってよ、もーっ!」
バシバシ、と杏奈が俺の肩を叩く。
テンションが上がっている所為か、真っ赤な顔して勢い任せだ。
理性が欠けている所為で地味に痛い。
「……ちょっと、イタイから」
杏奈とは正反対に落ち着いた声で、杏奈の手をやんわりと掴む。
そうすると、杏奈はぐいっと俺に顔を近づけてきた。
「だってだって!
海と風花ちゃんがカレカノになったんだよ!?
あんなに長い道のりだったのに、やっと……!」
嬉しさを身体中から表現させて杏奈が泣きそうなほど顔を歪ませた。
拳が痛そうなほど強く握られている。
「おめでとう! 海!
よかったね!」
「……ありがと」
はじけたように笑いながら、杏奈が俺に涙の混じった目で微笑む。
俺の今の状況も、先も見えない今の事態もすべて把握している誰かに、こんな風に祝福されるのはこんなにも嬉しいんだなと実感した。
よかったよかった、としきりに繰り返す杏奈を見下ろしていると、ふと杏奈が涙を拭いている手を止めて、俺を見上げた。
「……ねぇ」
「ん?」
「愛咲は、どうしたの……?」
「……」
杏奈の目に宿る色は不安一色に包まれていた。
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