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「言っとくけど、あたしは海に責任があるなんて思ってないからね。
あんたはムダに責任感あるから。
こんなとこで罪悪感なんか感じないでね?」
「……今言ったことを並べて、しれっとそう言えるあんたを尊敬するよ」
どう聞いたって俺に責任を求めるような言い方だったような気がするんだけど、杏奈にはそんなつもりはないらしい。
つまり、正直ってことだ。
正直ってやつは時々デリカシーがない。
「…でもね、ほら。
こんなの失礼かも知れないけど、すごく同情しちゃうんだよね」
「……うん」
「想像したら、どうしたって胸が痛むの。
今、どんな気持ちでいるんだろうって。」
杏奈は右手で自分の額を押さえた。
そのままゆっくりとその場にしゃがみ込む。
額を押さえた手が微かに震えていた。
「あたし、何て言ってあげたらいいんだろう。
友達なのに、言葉が見つからないの。
どうしたらいいのか分からないの」
「……」
俺もだよ。
その言葉は飲み込んだ。
言葉はこんな時いつだってマイナスにしか働かない。
伝える術にしては足りなすぎるから。
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