11.*本音*

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「せっかく、海が幸せになれたのにね。 どうしてこんなにいつも代償が大きいんだろう」 「……」 「どうしていつも、海ばかり。 何かほんの少し崩れただけで、こんなに罪が大きくなってしまうんだろう」 「いいよ、杏奈。 別にそんな泣かなくても」 ポタポタ、と杏奈の目からこぼれた雫がカーペットを濡らしていた。 俺も杏奈と目線を合わせるように杏奈の前にしゃがみ込む。 杏奈が顔をあげないから、顔は見ることができなかった。 「…はい、ティッシュ。 鼻水ふけば?」 近くに置いてあるティッシュボックスに手を伸ばして、それを差し出す。 すると杏奈はぐしょぐしょの顔を少しだけ上げて、俺を見上げた。 「いっ、今、鼻水とか言うなんて…っ!」 「だって、涙に混ざって鼻水出てるでしょ。 ドラマじゃないんだからしょうがないよ」 「うっさい、黙れ! デリカシー持ってよ」 「杏奈にだけは言われたくないかな」 茶化すような口調で言いながら、少しさっきより元気になった杏奈を見て心のどこかでホッとした。 杏奈の泣き顔を見るのはあまり好きじゃないのに、杏奈はよく泣く。 岳に対して、友達に対して。 俺に対して。 せめて俺のコトだけは泣いて欲しくないし考えて欲しくないから、こんな時はいつもティッシュを使っていた。 誰かの涙を見るのはいつだって、誰だって苦しい。
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