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全員が笑える方法があればいいのに。
それがあるならきっと俺は全部捨ててその方法に走っていける。
でもそれがいつだって見つからない。
一時の幸せにくるのは、何故かいつも大きな代償。
俺が婚約を破棄したことは、これから先にそれなりの重さの代償が来るはずだ。
愛咲だけじゃない。
感情だけじゃない何かが。
そして、それが来たことによって俺がもしかしたら空と同じ状況になるかもしれない。
そしたら営業の大黒柱がいなくなることになる。
それはうちにとったらかなりの痛手……、いやきっとそれ以上。
最悪の場合だって考えなくちゃいけなくなる。
『おまえは空と違って利口だろ』
この間、親父が言っていた言葉をふいに思い出した。
ズッ、と杏奈が隣で鼻を啜る。
ティッシュを三枚ほど勢いよく取る音がガサガサとした。
「利口じゃ、ないよ」
「…っ、え?」
ふいに発した俺の言葉に驚いて杏奈が俺を見る。
それにふっと笑みをのせて
「俺も結構、バカだったみたい」
と彼女に言った。
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