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「……どうしたの?」
自分の笑顔の悩殺力には気づいていない飯島くんが顔を赤くしたあたしを不思議そうに覗き見る。
……距離、近いって!
「いや、あの…、平気です」
何歩か後ずさりしながら苦笑いを返す。
飯島くんはイマイチ理解していない気色で「そう?」と首を傾げた。
「じゃ、どこ行こうか」
コロッと飯島くんは話題を変えて、再びスマートフォンに目線を戻す。
あたしがその様子をじっと見ていると飯島くんがちょいちょい、と人差し指を曲げてあたしを指で呼んだ。
そしてあたしにスマートフォンの画面を見せる。
「こことか、どう?
二駅で行ける大型ショッピングモール」
「わ、定番ですね」
「うん。……いや?」
「いえ、大丈夫です」
「じゃあ決まりね」
飯島くんは早々とスマートフォンの画面を黒に染めてそれをポケットに突っ込んだ。
その時、長財布がズボンの後ろポケットに入っているのも少し見えた。
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