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「あ、そろそろ電車来るから。
もう行くよ」
「あ、はい」
電光版に表示された時刻に目をやって、飯島くんがあたしを促す。
それと同時にあたしの前に手が差し出された。
「……え?」
「え?、じゃなくて。
手ちょうだい。繋げないでしょ」
「え、繋ぐんですか?」
「え、繋がないの?」
お互い驚いて一瞬固まる。
飯島くんの中では手を繋ぐのは、もはや常識らしい。
「……つ、繋ぎます」
差し出された手に照れながら、自分の手をのせると温かい体温があたしの手を包んだ。
ふと顔をあげると飯島くんと目が合う。
愛しいなぁ、としみじみ思った。
「はい、じゃ行くよ」
「あ、はい」
浸る間もなく、電車に遅れないようにエスカレーターに乗る。
幸せってきっと、こんなことを言うのだろう。
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