12.*明日*

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「あ、そろそろ電車来るから。 もう行くよ」 「あ、はい」 電光版に表示された時刻に目をやって、飯島くんがあたしを促す。 それと同時にあたしの前に手が差し出された。 「……え?」 「え?、じゃなくて。 手ちょうだい。繋げないでしょ」 「え、繋ぐんですか?」 「え、繋がないの?」 お互い驚いて一瞬固まる。 飯島くんの中では手を繋ぐのは、もはや常識らしい。 「……つ、繋ぎます」 差し出された手に照れながら、自分の手をのせると温かい体温があたしの手を包んだ。 ふと顔をあげると飯島くんと目が合う。 愛しいなぁ、としみじみ思った。 「はい、じゃ行くよ」 「あ、はい」 浸る間もなく、電車に遅れないようにエスカレーターに乗る。 幸せってきっと、こんなことを言うのだろう。
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