12.*明日*

10/27
前へ
/675ページ
次へ
「……え?」 「笑う?」 面食らったあたしを見て飯島くんが苦笑する。 あたしはそれに勢いよく首を振って、かわりに飯島くんの手をぎゅっと握った。 ……そうだ。 飯島くんがあたしの彼氏になった、ということは、あたしが飯島くんの彼女になったということなんだ。 今更だと呆れられるかもしれないけれど、そんなことにやっと気づく。 あたしが飯島くんを欲している感情は、飯島くんと共有できるものになったんだ。 「……とりあえず。 靴買いに行こうか」 コホン、と一つ咳払いをして飯島くんがいう。 視線があさっての方向に向いているのは、きっと照れているからだと思う。 「はい」 自然と笑顔になって、答えると飯島くんが困ったように眉を寄せて、そのままふいっと視線を逸らした。 そしてそのまま口を開く。 「ずるいね、風花は」 「え?」 意味が分からなくて、ポカンとしていると、飯島くんは小さく舌を出して、 「可愛いって言ってんの」 とあたしの頭をくしゃっと撫でた。
/675ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2482人が本棚に入れています
本棚に追加