12.*明日*

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「あ、…ありがとう……ございます」 こう言うのが精一杯だった。 いや、こう言うだけだって息が続かないほどドキドキしている。 もっと余裕で聞き慣れてるんですよー、ってオーラを出せるようなことを言いたかったけど、とてもじゃないけど無理だった。 可愛い、って言葉はかなりの魅力を持っている。 好きな人が言えばなおさら破壊力が半端じゃない。 「……」 真っ赤になった頬を冷ますように、デパートの高い天井を仰いだ。 はー、ってため息が漏れる。 そこに響くのは、流れる軽快な音楽とたまに放送。 「……腹、減ったな」 「そうですね。 靴屋さん行ったあとなにか食べますか」 「うん。 風花、何がいいの」 「あー…、何でも。 ファミレス、うどん、ソバ、ラーメンなんでもオッケーです」 「ラーメンって……。 初デートにミスマッチだね」 「ハハ。 でもあたし、好きですよ」 「そっか」 他愛のない会話。 繋いだ手を少し揺らしながら、靴屋さんまでの道のりを歩く。 指先だけで伝える想いがもどかしかった。
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