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「……あ、これ好きかも」
デパート三階。靴屋。
英語で書かれた店名の看板の下にあるハイカットのシューズを手に取って飯島くんが少し口角をあげた。
ゆっくりと腰を落ろして下にある靴にも目線を合わせる。
あたしが上から覗くと、いくつかの底が厚そうなシューズが並んでいた。
「……わ、重そう」
「重いよ。
でも俺、靴は重い方が好きなんだよね」
「歩きづらくないですか?」
「んー、否定はしないけど。
でも、それをくるめて好き。」
「へー…」
上から、飯島くんが少し楽しそうに口角をあげて靴を見る姿を見つめる。
飯島くんは本当に好きみたいで、なかなかしぶとく吟味していた。
「赤ってさ、買うの一瞬躊躇するけど、うまくいくとかなりキマるんだよね」
「学ラン……、とか?」
「あー、あれね。
中学の時に経験したけど、やっぱりデザインによるよ。
ダメなものは靴が悪目立ちするから、かえってダメ」
「そうですか……。
じゃあ、その赤は……?」
「うん、これ賭けだよね」
飯島くんがあまり明るめではない赤に染まった靴をあらゆる角度から眺める。
それを見ながら誕生日プレゼントを探した。
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