12.*明日*

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「あ、これもいい。 この店いーね」 飯島くんが、見てる棚の隣にあったブーツを手に取る。 こんなふうに普通の高校生みたいに楽しむ姿、見たことなかった。 いつも大人びていて、冷静だったから。 「あの……、飯島くん」 「ん?」 「あたしも、少し店内うろちょろしていいですか?」 「どーぞ、どーぞ」 飯島くんがしゃがんだままの体制であたしを見上げる。 上目遣いで見上げられるのなんか初めてで、ドキドキした。 「じゃあ、……いってきます」 「ふは、……いってらっしゃい。」 ふ、と飯島くんが細めた目は直視できそうにないくらい優しげで、息が詰まる。 「ちゃんと俺のとこに戻ってきてね、風花」 冗談めかしてそう言いながら飯島くんは、ヒラヒラと片手を力なくふった。
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