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女もののサンダルが並ぶ棚の前。
ゆったりとした音楽を耳で聞きながら、近くにあった靴を手に取った。
その時、ふと横にいた二人組の女の子の一人が「あ」と短く声をあげた。
「ね、あの人イケメンじゃない?」
「えー?どこにいる人?」
「あの看板の下にいる人」
「あー…、ってうわ!
マジだ!カッコいいわ!」
「でっしょーっ!?」
同調してくれたのが嬉しかったのか、女の子のテンションが上がる。
それと同時にあたしは、誇らしさとプレッシャーとが両方のし掛かってきた。
女の子のイケメン話は、半分はネタだ。
男の子みたいにナンパしたいとか、関わり持ちたいとかとはまた違う。
遠くから眺めてキャーキャーと騒ぐ、その行為にこそ意味がある。
勿論、カッコいいと思っているのは事実だけども。
「……」
……分かってる、つもり。
だけど遠くから、彼を見ればどっかの国の王子様みたいにかっこよくて。
近くにあった鏡を覗けばあたしなんてその下を歩くダンゴムシみたいなもんだ。
「………」
どうしよう。
本格的に自分の顔に嫌悪感を持ってしまって頭を抱えた。
カッコいい彼氏、なんて女の子の憧れ中の憧れだっていうのにまさかこんなところで詰まるなんて。
だってあたし、あんなにカッコいい飯島くんとじゃつりあうわけ、ない。
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