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聞いたことがない。
彼氏に劣等感を感じている、だなんて。
でもこんな風に鏡がいっぱいあるところに行けば嫌でも意識してしまう。
飯島くんの容姿の良さ。
彼の纏う独特の雰囲気。
息づかいの心地よさまで、すべて。
「……」
どうして飯島くんあたしなんかを好きになってくれたのだろう。
こんなにかっこよければどんなに綺麗な人とでも付き合うことできたのに。
……恥ずかしい。
自分が何でかとても嫌だ。
もっと綺麗に生まれたかった。
飯島くんの隣を歩いても、全然見劣りしないぐらい可愛くなりたかった。
あのカップルお似合いだね、って言われるくらい美人になりたかった。
「……風花?」
「………」
「泣いてんの?」
「…いえ」
「………」
泣いてなんかいない。
泣いてなんかいないけど、…泣きそうだ。
でも泣いたら飯島くんが困るに決まっている。
こんなこと、どうしようもないことだし、言ったとしても飯島くんに罪をなすりつけるような形になってしまうだけだ。
「………。ここじゃ、あれだから。
ちょっと来て」
「えっ…、でも靴…」
「いいから、おいで」
ぐっと腕を捕まれてそのまま引きずるように飯島くんがあたしを引く。
呆れられたかな、と思った自分にまたため息が出た。
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