2482人が本棚に入れています
本棚に追加
「い、飯島くん、いいです…っ!」
「なんで。
全然よくないよ」
「いいんですっ!
大したことじゃないんです…!」
引きずられるようにして引っ張られながら飯島くんの背中に向かって言うけど、飯島くんはあたしの言葉を無視してズンズンと出口に向かって歩いていた。
「ホント、大したことじゃなくて…!
あたしがバカなだけで…!」
「大したことだよ」
「……」
「風花が泣いてたら、俺にとってはどんなことでも大したことなんだよ」
「………」
キッパリと言い切ってそのまま足を進める飯島くん。
あたしの腕を掴む力が一瞬だけ強くなったような気がした。
……本当に、バカだ。あたし。
こんなことを言ってくれる男の子なんか世の中どこ探したって飯島くんだけなのに。
それなのに見栄張って意地張って、妙な劣等感を感じているのあたしは本当にバカだ。
これこそ飯島くんになんか釣り合うわけがない。
「い、飯島くん…、すみません」
「なんで謝るの」
「……っ、こ、こんな彼女だから…っ」
「なんで」
飯島くんはこちらを見ないまま、ハッキリと言った。
「風花は、誰にも変えられないほど愛しい俺の彼女だよ」
最初のコメントを投稿しよう!