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「………っ」
駄目だよ、飯島くん。
こんな彼女に、そんな甘やかすような言葉は禁句だよ。
もともと泣きそうな時だというのに、その言葉が嫌に身にしみて、それが表に出てくるかのように目頭が熱くなった。
「……ふっ、うぅ」
「泣かないで。お願いだから」
「こ、これは…っ、嬉し涙、です…っ」
「……」
ズッと鼻を啜りながら、少し早足で進む飯島くんを追いかける。
いつのまにかデパートの外に出ていて、その目の前には人影の少ない公園が広がっていた。
飯島くんは迷わずそこに足を進める。
そして一番手前にあったベンチの前に行くと、そこでピタリと足を止めた。
「……っ、い、飯島くん…?」
ズッと未だ鼻を啜りながら、何とも情けない声で飯島くんを呼ぶと飯島くんがゆっくりと振り返った。
その目が、心許なく揺れていて心臓がえぐられるように痛む。
「……痛いんだけど」
「え……」
「風花に泣かれると、結構クるんだよ、俺」
「……あ」
「どうしたらいいか、分からないから困るんだ。
どうしたらいいの?
その涙、俺で止めること出来る?」
「……」
一瞬だけ、ポーカーフェイスの表情が歪んだ。
目の奥が一瞬だけ揺らいだのが、あたしでも分かった。
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