2482人が本棚に入れています
本棚に追加
「別に、飯島くんが悪い訳じゃ、ないん、ですっ…」
飯島くんの揺らぐ瞳に促されるように口が開いていた。
恥ずかしくて、みっともなくて情けなさ過ぎるけれど。
「……うん」
飯島くんの落ち着いた声は、やっぱりあたしを安心させてくれる。
大丈夫だよ。
って言葉になっていないのに、直に空気の震えで伝えてくれる。
「……あ、あたしがっ、勝手にっ、劣等感抱いちゃって…っ」
「うん」
「い、飯島くん、すごく。
すごくカッコイイのに、あたし、全然可愛くなくてっ…」
「…うん」
「だからっ、こんなあたしじゃ、駄目なんじゃないかって。
そう思ったら悲しくてっ…」
「……うん」
「ふっ、う…ぅ」
何度も自分の手の甲で涙を拭いながら、つっかえつっかえ話した。
ゆっくりだし、日本語能力皆無だから伝わったかすら怪しい。
だけど一語一句見逃さないように聞いてくれる飯島くんの温かさが伝わってくるから、それだけがあたしを支えてくれる。
見失っても、分からなくなっても元の位置を教えてくれるかのようにいつだって凛と立っているから。
「……す、好きですっ。飯島くん」
「……」
「どんなに、かっこよくても。
あたしがどんなに、情けなくても。
絶対、失いたくない…っ」
ぎゅっと飯島くんの袖を握って伝えたのは、本当はきっと不安の根本にあった思い。
最初のコメントを投稿しよう!