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「……、それ、まさか風花に言われるとは思わなかった」
ハ…、と飯島くんはため息を吐くように笑った。
呆れられたかと思って顔をあげると、飯島くんの目は思いの外ずっと優しい目をしてあたしを見ていた。
―――呼吸を止めそうなほど、優しい目。
「……あ、あの」
「俺がどれだけ風花が好きか、風花は知らないんだよね」
「……え」
飯島くんは吸い込まれそうなほど優しい目をしながら、ゆっくりとあたしの頬を撫でた。
その目が「愛しい」って直に伝えてくるようで、身体に震えさえ感じた。
鳥肌が立つほど、奪われた。
「……ねぇ、風花。」
「……は、い…」
「好きだよ」
「……っ」
「好きでたまらない」
あたしの頬を撫でる手は、ゆっくりとあたしの耳を撫でてそのまま後頭部に回った。
そのまま、ゆっくりと抱き寄せられる。
その甘い息づかいが直で耳に触れた。
「……好きだよ」
「……っ」
「頭の中、風花しかいないみたい、俺」
優しい吐息に混じって囁かれた言葉。
耳の奥を越えて心臓まで奪いそうな呼吸。
――駄目だ。
この人の前では何もかも、全部無効だ。
全部リセットされて、ただひたすらにこの人に奪われる。
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