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どれくらい時間がたったのだろう。
飯島くんと抱き合っていた時間は長いような短いような、曖昧な感覚で。
ふわふわと地に足着かない状態のままだった。
だけど、飯島くんが身体を離したことで、それが自然と消えていく。
「…駄目だ、行かないと」
「え?」
「……仕事だ」
はーっ、と飯島くんはこれまでにないくらい、嫌そうな顔でため息をついた。
そして憎々しげに自分の腕時計を眺めている。
それを見ると、時計の針は2時を2分ほど過ぎていた。
「…わっ、時間過ぎてるじゃないですか!」
「うん…。
まぁ、いいかって思ってたんだけどね。
駄目だね、職業病っていうの? こういうのも」
はーっ、と飯島くんはまた深いため息。
それに苦笑いしてると、飯島くんはあたしの頬に手を添えた。
「ごめんね、お昼食べてないね、俺ら」
「あ、いえいえっ!そんな!」
「でも、お腹すかせちゃったよね。
この辺においしいパスタのお店あったんだけどな」
「いやっ、あの、ほんとに…!
そんなの自分で食べるので!
というか、むしろ困るのは飯島くんなんじゃ…」
言いかけて、自分で自分の言葉に実感してしまった。
当たり前だけど、飯島くんはこれから仕事。
あたしは食べてる余裕はあるけど飯島くんはない。
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