12.*明日*

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「あの、ほんとに…。 飯島くんお昼食べられるんですか…?」 「いや、抜くから平気」 「えぇっ!」 お昼ご飯抜きにしちゃったの、あたし…!? もうちょっと気を利かせればよかったと、後悔の念が一気に押し寄せてくる。 そもそも、あたしが靴屋さんで悩んだりなんかしなければ、こんな風にはならなかった。 「す、すみません…、ホントに」 「え?なんで、風花が謝ってるの?」 「だって…! あたしの所為でお昼逃しちゃって…!」 「別に風花の所為じゃないよ。 それに俺は昼食よりも風花とキスしてる方が好きだし」 「………っ!」 「だから、それでチャラ、ね」 飯島くんは少し悪戯っぽく笑ってあたしの頭を撫でると、その後でもう一度軽くあたしの唇にキスを落とした。 「じゃあね。 もう本当にヤバイから」 「あ、はいっ、あの」 「あー、送っていけなくてごめん! っていうか本当にバタバタしたデートでごめんね」 「いえっ、あの、そんな…」 「じゃ、また明日ね」 飯島くんは本当に時間がギリギリなようで仕切りに時計を見ている。 その姿で言いかけた言葉は飲み込んだ。 「はい、あの…明日」 ……楽しみにしています。 その言葉は省略した。 本当に切羽詰まって居るみたいだから。
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