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珍しく、少し慌ただしく飯島くんがあたしの元を去る。
きっと、ギリギリまで長くいてくれたのだろう。
仕事は営業なんだから遅れるわけにはいかないはずなのに。
「……好きだよ」
ドキドキなる心臓のあたりの服をぎゅうっと押さえて小さな声で囁いた。
愛しい気持ちが止めどなくあふれてきて、苦しい。
けど、心地の良い苦しさだった。
ゆっくりと立ち上がってデパートの方に向かう。
目指したのはあたしが飯島くんに靴を買うことを止めさせてしまったデパートだった。
さっき、気に入っているみたいだった靴を買おう。
飯島くんにプレゼントしよう。
明日は飯島くんの誕生日だから、最高の一日にしよう。
そう願ってレジを過ぎて、心躍らせながら家路を急いだ。
―――明日の幸せをただ願いながら。
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