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………やられた。
俺の誕生日当日。早朝。
穏やかな日差しが降り注ぐ窓を見ながら、小さなため息を吐く。
俺が寝ている場所は残念ながら、自分の部屋じゃなかった。
見たこともない、個室。
真っ白な壁に包まれていて、雰囲気を出すかのように窓辺で揺れるレースのカーテンが反射して光る。
落ち着いたクラシック音楽が微かに聞こえた。
……まぎれもなく、俺の家じゃない。
俺の部屋で昨日眠りについたはずなのに、ここは俺の家じゃない。
「……なんだこれ」
まだ眠い頭をフル回転させて今の状況を把握しようと試みる。
ふと顔をあげると、太陽の光が一つの物をピックアップするかのように照らし出しているのが目に入った。
それは、一面の白に囲まれた中でその存在を強調するかのような銀のタキシード。
その周辺には、何かを祝福するかのようにピンクや赤の花が飾られている。
……やられた。
その瞬間に、すべてを察知した。
最悪だ。親父の罠だ。
昨日、何故かお手伝いさんが持ってきたコーヒーに多分睡眠薬が入っていたのだ。
じゃなくちゃ、こんな状況を作れるわけがない。
「あー…」
後悔の念にかられて、その場にしゃがみ込んだ。
そうだ。
今日は俺の18歳の誕生日だったんだ。
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