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「……うん、ちょっと今の状況把握にね」
「状況把握?」
「うん。
俺は自宅で睡眠を取ったはずなのに、なんだって起きたら異世界にいるのか聞きたいんだよね。
ファンタジーじゃあるまいし」
「そうですね。
でも、それはきっとただ単に寝ている間に海様がここまで運ばれたからかと思われますが」
「そっか。
俺はそんな話聞いてないんだけど」
「……」
「……」
………ぶれないな、この男。
一歩一歩と離れている距離を俺が埋めているけれど、彼は後ろに下がることもなくキチン、とスーツを着こなして立っている。
相当腕が立つか、勇気があるのかどっちかだ。
好きなくても俺を前にして、こんな態度をとれるのは。
「……ねぇ、誰の企みなの、これ。親父?
やっぱ俺と愛咲を結婚させる気?」
「さすが海様。
鋭い観察眼をお持ちだと聞いております」
「……」
あくまで、その口から答える気はないらしい。
口止めされいるんだろう。
そんなときに、ちゃんと約束を律儀に守っているところはうちの会社としてはかなり有り難いことなんだけど、今だけは迷惑だ。
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