12.*明日*

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「じゃあ、質問変える。 あんた、俺を逃がしてくれる気ある?」 「……」 男はピタリと動きを止めた。 そして曖昧な笑みを浮かべて淡々とした口調で答える。 「ありません」 「あー…、やっぱりね」 いや、分かってたんだけどね。 心のどこかで抱いていた期待を100%打ち砕いてくれたことを呪いながらため息を吐く。 やっぱり正面突破しか俺に道はないらしい。 「じゃあ、ごめんね。 ちょっと痛くするよ?」 「は……」 男が返事をし終わる前に、俺は素早く彼の左腕を引き、その背後に回って首に手を回した。 こういうことは速さが一番の鍵になる。 ノロノロしてれば、相手が反撃してくる。 その一瞬を絶対に与えないのが喧嘩のコツ。 押さえ込んだ左腕を背中向けにねじ上げると、腕に独特の感覚がした。 それと共に、前の男がうめく。 痛いのは重々承知だから、心の中だけで謝罪の言葉を彼に渡した。 「肩、ハズしたから。 後ではめてもらって」 「……っ」 「痛いよね、俺もやられたことがあるから知ってるよ。 ごめん」 誰に、ってそんなの一人しか居ない。 俺に脱臼させる方法を教えたのも、喧嘩の方法を教えたのも同じ人だ。
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