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「あと、これちょっと借りる」
床に倒れ込んだ男の腰に下がった、携行品を取り付けた帯革から警戒棒を取り出す。
警察じゃないからさすがに特殊警棒を持っていたわけではなかったけれど、まぁそのぐらいはしょうがない。
これがあるだけで、この先の状況の苦楽がハッキリしているから泥棒みたいなことをしてるとは分かっているけれどやむなくお借りした。
「一応、許可を得たってことにして貰えるかな。
こっちも強盗にはなりたくないから」
「……っ!」
「ごめんね。
俺も今、誘拐事件真っ最中にいるもんで。
これは正当防衛に繋がるのか非常に怪しいけど、まぁいいや」
細かいことをウダウダ考えている余裕はない。
脱臼はきっと後で誰かにはめてもらえるだろう、と安い期待を抱いてそこから先へ急いだ。
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