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……これは、ちゃんと正当防衛の範囲に組み込まれるのだろうか。
男の腹に思い切り拳を埋め込ませると、男はう、とうめき声を上げて床に倒れた。
もう何人目か分からないこの状況。
相手が親父本人だったらきっとこんなに罪悪感は感じないのに、殴っているのが雇われている人間だと思うと地味に感じる。
ほら、不良とかみたいに自分からだったらまだいいんだけど。
きっとこんなこと願って警備員になった訳じゃないだろうし。
「……」
この先も、まだいるんだろうな。
そう思うと何となく憂鬱。
はー、と息を吐き出す。
周りの景色は青空にはまだまだ遠いコンクリートでできた壁、壁、壁。
ここから外にでるだけなのに、それがあまりに遠すぎて、肩を落とした。
――――その、瞬間だった。
ほんの少しだけ背後に人の気配を感じた。
それに慌てて身体を反らせて逃げようとするけれど、俺の首に男の腕が回る。
外そうと、その腕を強く握ってもそれがびくとも動かなくてこの、たった一瞬に冷や汗が垂れた。
なんで、こんなに強いのがいるんだよ。
自分より明らかに強い腕の力に焦って振り返る。
すると、
「いやー、派手にやってるねー海くん」
「……」
かなり見知った顔の男が居た。
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