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「悪かったな。
俺が技術教えた所為で」
「何改まってるわけ?
別に俺それに対して恨みないし、謝らなくて良いよ」
「ふは。
相変わらず、誰かの所為にすることしらねぇのな、オマエ」
良い子に育ったなー、とか父親みたいなことを言いながら空が俺の頭を撫でる。
いきなりどうしたんだと怪訝な目で見上げると、空が苦笑した。
「あー、やりずれぇなぁ」
「は?何が?」
「これ」
これ?と思った瞬間にはもう、ビニール袋を口に押し当てられていた。
病院の匂いにもどこか似た、独特の香りが鼻を掠める。
薬剤の香りだった。
「……っ!」
吸い込んだ瞬間、強い眠気が襲ってきた。
頭がクラクラする。
そんな簡単に一瞬でコロッと眠るようなクスリではないのだろうけれど、かなり強い睡魔が襲う。
まだ完全に眠る前に、空は俺の口からビニール袋をハズした。
「……なに、してんの。空」
「ごめん。
オマエ結構強くなってたから。
素手で連れてくのはさすがにキツそうでな」
「どう、いうこと…?」
ちくしょう。眠い。
こんなに心は緊迫してざわめいているのに、身体に力が入らない。
ドクドクとなる心臓とは相反した自分の眼瞼にイライラしながら、ただひたすら空の返事を待った。
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