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「……す、すみません…」
とりあえず怒られてしまったようなので謝る。
すると杏奈先輩は「あぁ、違うのよ」と電話越しなのにも関わらず投げやりな気持ちが伝わる声色でそう言った。
「どうしてこう、上手くいかないんだろうと思ってね」
「うまく?」
「そうよ。
あぁ、やっと幸せの道に行けるのかなって期待すると、それを待っていたとばかりに落とされていく気がするの。
神様って、もしいるならば相当な意地悪よねきっと」
あーあ、と杏奈先輩がため息とほとんど同化した声でそう呟く。
その声に背中を押されるような心地がして、あたしはゆっくりと家の階段を下りた。
……飯島くんが、結婚。
ギシッと歩く度に軋む階段の音だけが響くそこで頭を巡らす。
携帯電話は通話中のままなのに、そこでは沈黙が保たれていた。
……飯島くんが、……けっ、こん…。
「……」
駄目だ。何度繰り返しても駄目だ。
現実味がイマイチそこに現れてくれない。
17歳。
法律上あたしは結婚することが出来るはず。
でも、結婚なんて遠すぎる未来はその現実がいつかあたしに来るかどうかさえ実感を与えてくれない。
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