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「……あの、泣いちゃって…、すみませんでした」
「いいのいいのー!
むしろ可愛かったから」
「…へ?」
「なんかこうさー!
純粋無垢な恋愛ーって感じが伝わってきて可愛いよ。
もうあたし、正直二人のこと見てるのすごく好き!」
にこっと人なつこい笑顔を浮かべて杏奈先輩が笑う。
その笑顔を見ながら、きっと杏奈先輩は杏奈先輩で絶対飯島くんの役に立っているんだろうなと思った。
「さて!
ところで時間が迫っているから、本題に入ります!」
「あ、はい」
杏奈先輩がピシッと背筋を伸ばして『気合い十分』という気持ちを全面に出して言うから、あたしにまでその緊張感が伝わって自然と背筋が伸びた。
その様子を後ろから見ていた運転手さんがふいにあたしの方を見て苦笑した後、少し遠慮がちに口を開いた。
「あの、申し訳ありませんが、ひとつよろしいでしょうか?」
「ん?なに?」
運転手さんの声に杏奈先輩がくるっと一回転しそうな勢いで振り返る。
その様子を見ても運転手さんは穏やかな笑顔を浮かべて、そのまま続けた。
「そろそろ乗っていただけないでしょうか。
教会へはここから少し遠いので。
間に合わなくなってしまいます」
「あっ、そうか!
よし!とりあえず風花ちゃん乗って!」
ぐいっと腕を引かれて半ば強引に、車の中に滑り込む。
前にもこんなことがあったような気がすると思いながら、あたしはその手に身を任せた。
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