13.*略奪*

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車の中に入ると、その独特の匂いが鼻を刺激した。 高級車のせいかどうかは分からないけど、少し匂いがキツく感じる。 杏奈先輩は慣れているのか、ふんふんと鼻歌を歌いながらスマートフォンを弄っていた。 その様子をじっと見ていると、ふいにそのスマートフォンが小刻みに震えた。 「電話だ。 ちょっとごめんね」 杏奈先輩はあたしに一言断りを入れると、タッチして電話に出た。 『あー、杏奈? 俺俺、俺だけど』 「すいません。 オレオレ詐欺なら間に合ってます」 受話器からの声が大きいのかあたしにまで聞こえる。 その会話に思わずふっと笑ってしまった。 「あー、笑われたー! 風花ちゃんに笑われたよ、あたしと空の会話ー」 『いいじゃん、いいことじゃん』 「年下に笑われるってどうなのよ」 わざと少し唇を尖らせて文句を言う杏奈先輩。 その横顔までもが可愛かった。 『つかなに、風花ちゃんそこにいるの? 俺の声届いてる? 久しぶりーっ!』 「うわっ、耳元で叫ばないでよ!」 杏奈先輩がスマートフォンを耳から離して、顔を顰める。 あたしはその声を聞きながら小さく首を傾げた。
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