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車の中に入ると、その独特の匂いが鼻を刺激した。
高級車のせいかどうかは分からないけど、少し匂いがキツく感じる。
杏奈先輩は慣れているのか、ふんふんと鼻歌を歌いながらスマートフォンを弄っていた。
その様子をじっと見ていると、ふいにそのスマートフォンが小刻みに震えた。
「電話だ。
ちょっとごめんね」
杏奈先輩はあたしに一言断りを入れると、タッチして電話に出た。
『あー、杏奈?
俺俺、俺だけど』
「すいません。
オレオレ詐欺なら間に合ってます」
受話器からの声が大きいのかあたしにまで聞こえる。
その会話に思わずふっと笑ってしまった。
「あー、笑われたー!
風花ちゃんに笑われたよ、あたしと空の会話ー」
『いいじゃん、いいことじゃん』
「年下に笑われるってどうなのよ」
わざと少し唇を尖らせて文句を言う杏奈先輩。
その横顔までもが可愛かった。
『つかなに、風花ちゃんそこにいるの?
俺の声届いてる?
久しぶりーっ!』
「うわっ、耳元で叫ばないでよ!」
杏奈先輩がスマートフォンを耳から離して、顔を顰める。
あたしはその声を聞きながら小さく首を傾げた。
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