13.*略奪*

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「えっ……と、あの…。 空、さん…?ってあたしと面識ありましたっけ……?」 相手に失礼のないように、電話で聞こえないほどの声で杏奈先輩に囁く。 すると杏奈先輩もあたしと一緒に首を傾げた。 「……確かに。 ねー、空ー、あんたどこで風花ちゃんと知り合ったの?」 『えー? ……あ、そっか。風花ちゃん覚えてないのか』 「……す、すみません…」 会ったのに覚えてないなんて失礼な話だ。 しかも向こうはあたしの名前聞いてハッとするほどあたしのことを知っていてくれたみたいなのに。 申し訳ない気持ちで小さくなっていると、空さんがハハッと笑った。 『そりゃ分からねーわな。 俺、名前言ってねーし』 「へ?」 『覚えてるー? 海とデートして時、焼きそば買ってるあんたに会ったんだけど』 ……焼き、そば……。 「あぁーっ!あのお兄さん!?」 『おー、覚えててくれたんだー。 そうです、あのお兄さんです』 「ええぇっ!! 杏奈先輩のお知り合いだったんですか!?」 『杏奈先輩のお知り合いの上に、キミの彼氏の一番上の兄貴でーす』 「えっ。えっ! えぇえっっ! 飯島くんのお兄さんっ!?」 いきなりの繋がりでビックリしすぎて思わず大きな声が出る。 そのあたしの様子が可笑しいようで、電話口の向こうでも空さんが笑っているのが分かった。
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