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「じゃあ、どうやって捕まえたのよ。
まさか喧嘩してきたの?!」
『いやー、ちょくら、アレをね。
うん、ちょっと吸飲用の睡眠薬で力抜かせてから……ね?』
「えぇええっ!
なんでそんなもの吸わせたのよ!
あんたなら力尽くで連れてくることできたでしょう!?」
今度はあたしじゃなくて杏奈先輩が怒ったような興奮したような面持ちでスマートフォンに勢いよくまくし立てる。
それを聞いた瞬間、『んー』と言いにくそうな声で出来た空間を埋めて、空さんが口を開いた。
『今回、正直捕まえられる自信なかったわ』
「え?」
『いや、海を見るまではあったんだけど。
……あの顔見たら自信喪失した』
「……はい?」
杏奈先輩は意味が分からないらしい。
ぽかんとして、固まっている。
あたしはもはや、いろいろなコトを知らなすぎるからポカンを通り越していてリアクションもできない。
「だって、空、あんた海に負けたことナイじゃない」
『おう、ない。
でもきっと、あの時正面衝突してたら俺負けてたわ』
「……え?」
『目がすごかった。
目の前の男がぶっ倒れて、それを見た後廊下の先を見る目がね。
殺気っていうの?
……海が別人みたいに見えた』
「……」
『正直、怖かった』
最後の言葉が妙に胸の内に残った。
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