13.*略奪*

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『だから悪いと思ったけど、睡眠薬使わせて貰ったわ。 俺に対しての警戒心はゼロだったしな。 ちょっとは警戒心も持てって忠告しといたけど』 「海はこれ以上警戒心なんか持たなくて良いよ。 少しは安心できる場所がないと気が滅入っちゃう」 『今は風花ちゃんの隣がそうだろー』 「えっ」 いきなりあたしの名前が会話に出てきてパッと顔を上げた。 杏奈先輩の方を向けば、杏奈先輩が優しく目を細めてあたしを見ている。 「……そ、そうなんですか?」 「そうよー。 海の唯一のオアシスみたいなものじゃない?」 「い、いや…、さすがにそんなたいそうなものではないですけど……」 言葉を濁しながら、若干見栄を張ったように感じた。 オアシスとか、あたしには離れすぎている。 もはや水たまりにすらなれていない自信があった。 だってあたし何もしていない。 飯島くんにはしてもらうばかりで、いつも迷惑をかけてばかりで、それをいつも飯島くんがカバーしてくれていて。 「……」 本当にビックリするくらいに何もない。
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