2482人が本棚に入れています
本棚に追加
『だから悪いと思ったけど、睡眠薬使わせて貰ったわ。
俺に対しての警戒心はゼロだったしな。
ちょっとは警戒心も持てって忠告しといたけど』
「海はこれ以上警戒心なんか持たなくて良いよ。
少しは安心できる場所がないと気が滅入っちゃう」
『今は風花ちゃんの隣がそうだろー』
「えっ」
いきなりあたしの名前が会話に出てきてパッと顔を上げた。
杏奈先輩の方を向けば、杏奈先輩が優しく目を細めてあたしを見ている。
「……そ、そうなんですか?」
「そうよー。
海の唯一のオアシスみたいなものじゃない?」
「い、いや…、さすがにそんなたいそうなものではないですけど……」
言葉を濁しながら、若干見栄を張ったように感じた。
オアシスとか、あたしには離れすぎている。
もはや水たまりにすらなれていない自信があった。
だってあたし何もしていない。
飯島くんにはしてもらうばかりで、いつも迷惑をかけてばかりで、それをいつも飯島くんがカバーしてくれていて。
「……」
本当にビックリするくらいに何もない。
最初のコメントを投稿しよう!