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「……無責任なことを言っているように見えるのは重々承知の上です。
でも、あたしは飯島くん以外の人、考えられる気がしないんです」
「……でも、」
「だって。
あたし、飯島くんが岳先輩のふりをしてあたしを騙していたことを知っても嫌いになれなかったんです。
寧ろ好きだって自覚しちゃったくらいなんです。
それなのに、忘れられるわけがない」
口に出してから、その言葉がじんわりと胸の中を熱くさせた。
そうだ、無理なんだ。
飯島くん以外目に入らなくて、例えどんなに忘れたくても忘れられなくて、苦しくて藻掻いて足掻いて、でも全部ダメだった。
結局何度だって笑顔一つで、声一つで、全部チャラになる。
何度だって恋に落とさせる。
あたしに「あたしは飯島くんが好きなんだ」っていう自覚を嫌だと言うほどにさせられる。
結婚するなんてまだ全然実感なんかわかないけれど、でも絶対に後悔はしない自信があった。
後悔はしない、するわけがない。
ここで断った方があたしは後悔する。
「……お願いします、杏奈先輩」
車のシートに座りながら深く頭を下げた。
今のあたしに出来ることはコレしかない。
「あたしに、飯島くんの結婚を止めさせる方法を教えてください」
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