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「よっし、じゃあ風花!」
「は、はいっ!」
初めて呼び捨てで呼ばれた自分の名前に、確かな高揚感を感じながら強く返事をする。
その意気込みが伝わったのか、前で運転している運転手さんが若干笑ったような気がした。
恥ずかしくて少しだけ頬が火照る。
杏奈先輩はそんなあたしを少し可笑しそうに笑って、得意そうな笑顔で人差指を一本たてた。
「今回の計画において、可愛い我が妹にやってもらうのはたった一つよ」
「え?一つ?」
「そう。海のこと正面切って略奪してくれればいいの」
「……はい?」
一瞬言葉が理解できなくて首を傾げる。
すると杏奈先輩は極上級の笑顔を見せて、口を開いた。
「つまりね?
結婚式が始まったら、そこに乱入して海を連れ去って欲しいの」
「はいっ!?」
あまりのことに思わず大きな音が出る。
のけぞった拍子に窓ガラスに後頭部を打ち付けたけど、その痛みすら感じている心の余裕はなかった。
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