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「よしっ、じゃあ決まりね。
そうと決まったら……」
「お嬢様、教会の方に到着致しました」
杏奈先輩の声に被せて、ずっと黙っていた運転手さんが口を開く。
驚いて背中を向けていた窓ガラスのほうを振り返ると、そこには芝生が一面に広がっている景色があった。
その奥の少し高くなったところに青い屋根に白い壁の建物が建っている。
その上には金色に輝く鐘がついていた。
「うわー!」
その綺麗な景色に感嘆の声を上げる。
思わず窓を開けると、春の温かな風があたしの髪を撫でた。
「うわーうわーっ、すごーいっ!
すごく綺麗ですねっ」
「そうね、ここはこの辺でもかなり有名な結婚式場だから」
杏奈先輩はあたしを見て穏やかに微笑む。
それにあたしも笑い返して、再び美しい景色に目を奪われていると、ふと視界に駐車場が入って目をそこに下ろした。
「うわっ」
「え、どうしたの?」
「ベンツばっかりですね…」
「あぁ」
杏奈先輩は慣れっこのようで、あたしの肩越しに駐車場を見ながら頷く。
あたしは、ずらりと並ぶ外車の数に唖然としていた。
「しかも、すごく綺麗。
ぴかぴかしてる」
「そりゃーもう、しょっちゅう洗車してるからね」
「ガソリンスタンドでですか?」
「え?ガソリンスタンドって洗車できるの?」
「え?」
「……」
「……」
ダメだ、絶対にガソリンスタンドではない。
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