13.*略奪*

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「……あたしには、未知の世界な気がします」 「そうかしら。いるのはただの生きてる人間よ。 心臓が二つあるわけでも、超能力が使えるわけでもない。 遠そうに見えても実は身近なただの人だよ」 「……」 杏奈先輩の言葉にはやたら深みがあって、それ以上何も言えなかった。 きっと、こんな風に未知の人、扱いされるのは慣れているのだろう。 でも確かにそうだ。 総理大臣も、大金持ちの人たちも、ただの人間なんだ。 普通に笑って、普通に泣いて、感情だって持っている人間。 「……そう、ですよね」 「うん、そうだよ。 それに風花はこの先ここの人間になるんだからね」 「あ、そっか……」 全然実感なんか湧かないんだけど。 そよぐ風に身体を預けながら、窓から身を乗り出してその場所を見渡すと、やっぱり歩いている人たちはどこか品のある感じがした。 歩き方とか仕草とか。 そういう教育を受けてきたのか、それともこうして生きる世界で独りでに学んだのかは分からないけれど、それでも非常に優雅だ。 「憧れますね、やっぱり」 「え?」 「お金持ちは高飛車だ、とか、性格悪いとか言う人も居るけどこういうのってきっとこんな感情から来るんでしょうね」 「……え…?」 「本当は羨ましい。 あなたみたいになってみたかったって心のどこかで思っているからだと思います。 だってこんなにカッコイイんですから」 杏奈先輩が目を見開いたのが、なんとなく見なくても分かった。
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