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「うわ、髪が……っ」
車の外にでると思ったよりも風が強かった。
杏奈先輩は一応結婚式に出ることになっているのかキチンとした格好をしている。
ピンクのドレスがすごく似合っていて大人っぽい。
「…あの、あたしの格好、これでいいんですかね?」
「あぁー、いいのいいのー。
風花は出席するんじゃなくて、略奪するんだから」
「……そ、う…ですね」
何とも返事しづらい言葉に顔を引きつらせる。
引き受けといてなんだとは思うけど、今からドキドキしてきた。
飯島くんじゃない人連れてったりとかそんなことはないよね?
間違って愛咲ちゃん連れて行ったりしたら、それこそ怒られちゃうし。
ここぞと言うときにドジしそうで怖い。
心臓がバクバクいってきた。
しかも、この黒スーツに身を包んだエリート達の真ん中でそれをすると思うと、現実味と共に不安しか押し寄せてこない。
「だーいじょうぶよ、風花」
「えっ」
「エリートはそんなに堅物ばかりじゃないから。
きっと風花が略奪したことを喜ぶ奴らばかりだとあたしは思うわね。
通常ではありえない例を楽しむ物よ、結構」
「そ、そういうものですかね…」
「そういうもんよ。気楽にいこーね」
結婚式から花婿を気楽に略奪するのもどうかと思うけど…。
心の中だけでそう呟きながら、あたしは歩き出した杏奈先輩の背中を追った。
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