13.*略奪*

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「別に心配することはないぞ、愛咲。 海くんのこと、おまえも気に入ってたじゃないか」 「……う、ん」 愛咲ちゃんの返事はまだ弱い。 そんなとき合図があって、式場のドアが開かれた。 そこから 「新婦のご入場です!」 という明るい声が響く。 「ほら、行くぞ愛咲」 「……うん」 コクリと小さく頷いた愛咲ちゃんはそこから先へ歩いて行く。 ―――行かないで。 このとき初めて、こんなにも強く心の声が叫んだ。 あの、ドアの先に飯島くんがいると思ったらなおさら感情が膨れあがる。 嫌だ、行かないで。飯島くんを取らないで。 そんな格好で飯島くんの隣に並ばないで。 身震いがした。 怖くて、怖くて。 初めて今、この無情にも閉まったドアを恨めがましく思った。 杏奈先輩の合図を待っているのがもどかしく感じた。 今すぐかけだしていきたい。 飯島くんのこと、こんな場所に置いておきたくない。 好きだよ、飯島くん。 だからお願いだから、早く時間がたって欲しい。 こんなところにいたくない。こんなところは見たくない。
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