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「別に心配することはないぞ、愛咲。
海くんのこと、おまえも気に入ってたじゃないか」
「……う、ん」
愛咲ちゃんの返事はまだ弱い。
そんなとき合図があって、式場のドアが開かれた。
そこから
「新婦のご入場です!」
という明るい声が響く。
「ほら、行くぞ愛咲」
「……うん」
コクリと小さく頷いた愛咲ちゃんはそこから先へ歩いて行く。
―――行かないで。
このとき初めて、こんなにも強く心の声が叫んだ。
あの、ドアの先に飯島くんがいると思ったらなおさら感情が膨れあがる。
嫌だ、行かないで。飯島くんを取らないで。
そんな格好で飯島くんの隣に並ばないで。
身震いがした。
怖くて、怖くて。
初めて今、この無情にも閉まったドアを恨めがましく思った。
杏奈先輩の合図を待っているのがもどかしく感じた。
今すぐかけだしていきたい。
飯島くんのこと、こんな場所に置いておきたくない。
好きだよ、飯島くん。
だからお願いだから、早く時間がたって欲しい。
こんなところにいたくない。こんなところは見たくない。
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