13.*略奪*

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「今更だけど、タキシードで逃げるのは無謀だったね」 結婚式会場を抜け出して、路上に出ると俺は迷わずタクシーを捕まえた。 高いんじゃ、とかごちゃごちゃ風花が言っていたけど、ほとんど無理矢理引き込むようにしてタクシーに乗せる。 「あの、飯島くん。あたしお金……」 「俺持ってるから。 杏奈からカードも貰ってるしね。」 「……ぬ、ぬかりないんですね」 「どこにいってもお金は必須」 「……」 結婚式から連れ出されたにしては、随分現実的な会話をしながらタクシーの運転手さんに行き先を告げる。 言ったのはここからそれなりに距離の離れた服屋だった。 タキシードは走りづらいし、何より目立つ。 親父が俺を捜さないわけがないし、俺は見つかるわけにはいかない。 だからとりあえず、人目のつかないタクシーに追っ手が追いつく前に慌てて乗り込んだ。 「……ホントに、抜け出して来ちゃったんですね……」 風花が吐息混じりの声でそう呟く。 「あっという間すぎて実感湧かないです」 「ハハ、俺も」 思ったよりも随分手っ取り早くて、しかも時間も本当に一瞬で、実感なんか全然湧いてない。 まるでおままごとでもしてきた気分だった。
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