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「…この選択、正しかった…んです、よね?」
不安そうな目をして風花が俺を覗き見る。
その目を俺はしっかり見返しながら、車のシートの上に置いてある彼女の手をぎゅっと握って答えた。
「間違ってるよ」
「え?」
「社会的には、絶対に間違ってる」
「……」
風花は俺の言葉に黙り込む。
もしかしたらもっと気の利いた優しい紳士のような言葉があったのかもしれないけど、俺には見つからなかった。
俺たちのやったことは間違っている。
他人を傷つけて、作り上げてきた物をぶち壊し、たくさんの気持ちを弄んだ。
やったことに罪悪感は感じている。
でも後悔はしていない。
明らかに矛盾していて、でもそれが事実。
「……風花、でも一つだけ」
「……え?」
「さっきも、言ったけど。
ありがとう」
「……」
ハッとしたように項垂れた顔をあげて俺を見る風花の肩に俺の頭を落とす。
その近い距離から風花の香りがした。
……あぁ、この場所が世界中のどこよりも落ち着く。
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