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「……っ!」
思わず後ろに身体を引いた俺を見て、風花が機嫌良さそうに笑う。
その花が咲いたような笑顔を、顔面いっぱいに浮かべながら
「ドキドキしました?」
って聞いてくるから、―――死にそうになる。
「……はいはい、しました、しましたー」
わざとちゃかすような口調でそう言って、タクシーの窓枠に肘を置き、その手の平で顔を支えた。
視線は窓の向こうにそらす。
これ以上、自分が赤くなって風花に振り回されている所なんか風花に見せたくなかった。
「……あ、の…。
怒りました……?」
「怒ってないよ。
そんな心狭くない」
「でも……」
風花は鈍いから俺の気持ちを察してはくれないらしい。
俺の背中に一生懸命、子犬みたいに声をかけてくる。
「…お、怒ってない…ん、ですよね……?」
「だからそうだって」
「……じゃ、じゃあ。こっち向いて下さい……」
服の袖を引っ張ってそう懇願する、俺の可愛い風花。
可愛くて、可愛くて。
その行動も可愛くてたまらないから。
それにまた、愛しさと頬が赤くなる感覚が同時に迫ってきて、また顔をそちらに向けることが出来なくなってしまった。
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