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「いいよ、そんなの一回で済ますから」
「え?」
俺の返事に驚いた顔をする風花を横目に、
「運転手さん、ここでいいです」
と言って、お金を払いタクシーを降りる。
風花は俺の言葉の意味が分かっていないのか、しきりに一人首を捻っていた。
その手をかなり強引に引いて歩き出す。
そして、近くの路地裏に素早く逃げ込むと、その壁に風花の背中を預けさせて両手で彼女を囲んだ。
風花の表情が見る間に赤くなる。
「えっ……えっ?」
俺の腕の中にいながら、目を白黒させる風花。
真っ正面に俺の顔があるんだから、俺を見ればいいのに、しきりに目線を俺から外してる。
その様子が何となく気にくわなくて、無理にでも視線を合わせるように彼女を覗き込んだ。
「わっ、近いっ」
「そりゃー、今からキスするんだからね」
「はいっ!?そうなんですか!?」
「そうだよ。
風花が言ったんだよ?キス10回って。」
「そ、それを言ったのはあたしじゃなくて、飯島くんです……っ!」
「どっちでもいいよ」
クスクスと風花の反応に笑いながら、風花の頬にキスを落とす。
それだけで真っ赤になる風花。
可愛いを越えて、ちょっと憎くなるくらいに愛しい。
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