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「風花も寝て良いよ。
疲れてるだろうから」
「………」
電車の中。行き先、海。
ガタン、ガタン、と規則正しく揺れるその箱の中は、朝の登校時間よりもずっと人の数が少なくて、一車両にあたしたちを含めて4人くらいしかいなかった。
その一番端の席で、本日は何故か甘いモードの飯島くんがあたしの肩を枕にして目を閉じている。
着ている服は、タキシードじゃなくて私服。
飯島くんはタクシー下りるタイミングもちゃっかりしていて、ちゃんと服屋さんの横で下りていた。
服屋さんに入ったときは、店員さんがすごく驚いていたけれど。
「……」
「……」
結婚式から連れ出してきたとは思えないほど、のどかだ。
海に近づいているせいか、周りの景色からビルは少しずつ消えていく。
飯島くんは図太い神経をしているらしく、本当に眠っていた。
長めのまつげが、綺麗な肌によく生える。
飯島くんは、カッコイイ。
イケメン、とも言うかも知れないけど、美人だと思う。
きっと女装したってかなりの美人だ。
『海は、綺麗な人生ロードは歩いてない』
そう杏奈先輩が言っていたけれど、そんな人がこんなに綺麗な人でいられるだろうか。
経験したからこその強さとか、美しさってきっとあるんだと思う。
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