14*避行*

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* * * 「風花も寝て良いよ。 疲れてるだろうから」 「………」 電車の中。行き先、海。 ガタン、ガタン、と規則正しく揺れるその箱の中は、朝の登校時間よりもずっと人の数が少なくて、一車両にあたしたちを含めて4人くらいしかいなかった。 その一番端の席で、本日は何故か甘いモードの飯島くんがあたしの肩を枕にして目を閉じている。 着ている服は、タキシードじゃなくて私服。 飯島くんはタクシー下りるタイミングもちゃっかりしていて、ちゃんと服屋さんの横で下りていた。 服屋さんに入ったときは、店員さんがすごく驚いていたけれど。 「……」 「……」 結婚式から連れ出してきたとは思えないほど、のどかだ。 海に近づいているせいか、周りの景色からビルは少しずつ消えていく。 飯島くんは図太い神経をしているらしく、本当に眠っていた。 長めのまつげが、綺麗な肌によく生える。 飯島くんは、カッコイイ。 イケメン、とも言うかも知れないけど、美人だと思う。 きっと女装したってかなりの美人だ。 『海は、綺麗な人生ロードは歩いてない』 そう杏奈先輩が言っていたけれど、そんな人がこんなに綺麗な人でいられるだろうか。 経験したからこその強さとか、美しさってきっとあるんだと思う。
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