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「………見過ぎ」
「わっ!」
急にむくっと起き上がった飯島くんに驚いて思わず無意味に顔を背ける。
すると飯島くんが左手で自分の目を擦りながら、「視線を感じて眠れない」と不満そうに呟いた。
「……す、すみません」
「いや、別に良いけど。
ガン見はヤメテ」
「いや…、だって、本当に綺麗だなって思って」
「うっわ、風花すごいね。
そういう台詞をサラッと言っちゃうあたりが風花だね」
「……え、どういうことですか」
微妙に言い合いになりながら、でも飯島くんはその頭をあたしの肩に預けたままだ。
それどころかぎゅっと右手で、あたしの左手を握っている。
「……あのさ」
「はい」
「なんで風花って俺に敬語なの?
同級生どころか三年間同じクラスなのに」
「……」
そういえば、なんでだろう。
あたし別にいっちゃんとかには敬語使ったりしないのに。
特別理由もなくて、首を捻ると飯島くんがそれを目だけで見上げながらさらに続けた。
「なんかいきなり敬語をとれっていうのも、やりづらいかもしれないから、とりあえず『飯島くん』やめない?
俺、風花って呼んでるのに不公平」
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