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「わっ、ちょっ、予告して下さいよ!
なんで不意打ちで撮るんですかっ」
「え、自然な姿がいいから。
目半開きだし」
「消して下さいっ!
今すぐ消してっ!」
「はいはい」
飯島くんは苦笑して、携帯を操作しているかと思うと、またあたしのことをパシャッと撮った。
「飯島くんっ!
景色撮って下さいよっ!!」
「無理。
これは風花専用のカメラなんだから、風花以外は撮ること出来ない」
「~~~っ!
なんか屁理屈じゃないですか!?」
「そんなことないよ。
風花とその背景に海を撮れば、俺はそれで十分」
飯島くんは機嫌良さそうに携帯を操作して事も無げにそう言いのけた。
かぁっと熱くなるあたしの頬には気づいていない。
「……あたしばっかり撮られるのも癪なんですけど」
「そう?」
「そうですよ!
飯島くんのことも撮らせて下さいっ」
「やだ。
俺写真嫌いだし」
「そんな綺麗な顔して、何を嫌がることがあるんですか!」
そう言いながらあたしも用意していた携帯で飯島くんの写真をパシャッと撮った。
背景は、灯台の柱。
海なんて全然関係のない風景。
でも、あたしには海よりずっとずっと好きな写真になった。
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