14*避行*

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「……すごい。 飯島くんがあたしの携帯の写真になってる……」 「ふはっ、感動するとこなの?それ」 「だって……」 その先は言葉になって出てこなかった。 いい日本語が見つからなくて。 あんなに遠いと思っていた飯島くん。 いつもどこか距離を感じて、それを埋めることができなくて、あんなにモヤモヤしていた。 飯島くん、飯島くん、っていくら呼んでも距離が縮まらなくて、振り向き際に見せる表情はいつも読めなくて。 好きですって叫んでも、見えるのは靄をかけたかのように色のない目。 でも、写真の中のこの人は違かった。 『飯島 海』という名の男の子。 それだけの人。 子供みたいに笑って、意地悪して、それで…… 「……」 写真から目をハズして、飯島くんを見上げる。 「ん?」と首を傾げた飯島くんの色素の薄い髪が海風に強く煽られて、揺れていた。 「……」 一歩一歩、と飯島くんに近づいて、ぎゅうっとその身体に抱きつく。 飯島くんの匂いがして、それがすごく心地良い。 「……風花。 俺の腕まで、抱きしめられたら俺、抱きしめ返せないんだけど」 飯島くんごと、飯島くんの腕もあたしが抱きしめているから飯島くんは、抱きついているあたしをのんびりと見下ろしてくる。 その視線がさらにあたしの幸せを膨れあがらせて、あたしはさらに強く抱きしめた。
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