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「……すごい。
飯島くんがあたしの携帯の写真になってる……」
「ふはっ、感動するとこなの?それ」
「だって……」
その先は言葉になって出てこなかった。
いい日本語が見つからなくて。
あんなに遠いと思っていた飯島くん。
いつもどこか距離を感じて、それを埋めることができなくて、あんなにモヤモヤしていた。
飯島くん、飯島くん、っていくら呼んでも距離が縮まらなくて、振り向き際に見せる表情はいつも読めなくて。
好きですって叫んでも、見えるのは靄をかけたかのように色のない目。
でも、写真の中のこの人は違かった。
『飯島 海』という名の男の子。
それだけの人。
子供みたいに笑って、意地悪して、それで……
「……」
写真から目をハズして、飯島くんを見上げる。
「ん?」と首を傾げた飯島くんの色素の薄い髪が海風に強く煽られて、揺れていた。
「……」
一歩一歩、と飯島くんに近づいて、ぎゅうっとその身体に抱きつく。
飯島くんの匂いがして、それがすごく心地良い。
「……風花。
俺の腕まで、抱きしめられたら俺、抱きしめ返せないんだけど」
飯島くんごと、飯島くんの腕もあたしが抱きしめているから飯島くんは、抱きついているあたしをのんびりと見下ろしてくる。
その視線がさらにあたしの幸せを膨れあがらせて、あたしはさらに強く抱きしめた。
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