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「……ぎゅってするっていいですね」
「ん?」
「こうしてれば、飯島くんあたしから逃げられない」
そう言って飯島くんの胸板に頬を擦りつけると、飯島くんはあたしの頭上で苦笑した。
「別に離しても逃げられないよ」
「え?」
「もうね、心が逃げられない。
嫌だってほど分かったよ。
どんなに距離を開けても、心だけはいつも風花の傍に置き去りになる。」
「……うそ」
「嘘じゃないし。
ホント、勘弁してよね」
飯島くんはそう言って、あたしの頭に顔を埋めた。
そして、あんなにキツく抱きしめていたはずなのに、飯島くんは容易くその腕をあたしの腕から抜いてあたしをぎゅっと抱きしめる。
そしてはぁーっと深い深呼吸のように息を吐き出した。
「……約束する。逃げないよ」
「………」
「だから、風花も逃げないで。
じゃなきゃ、離さないから」
ぎゅっと飯島くんのあたしを抱きしめる力が強くなって、あたしの頭の芯が痺れた。
その熱に浮かされるように、あたしも抱きしめ返す。
「……好きです、飯島くん」
「うん」
「好きです、好きです、好きです、好きです、好きです」
壊れた機械みたいに、その言葉を連呼しながらあたしはこれ以上ないってほど飯島くんを抱きしめた。
―――苦しくて。
あふれかえるほどのこの気持ちを外に出さないと、あたしがパンクする。
飯島くんが好きすぎて、痛い。
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