2482人が本棚に入れています
本棚に追加
/675ページ
「風邪だと思います。
かなりの高熱を伴っていますが」
病院の診察室。
とりあえず小さな診療所に駆け込んで、風花を見て貰うと風花は風邪だと診断された。
ただ熱が40度近くあった。
たぶん俺が無理をさせた所為だと思う。
「一日、二日安静にさせてあげて下さい。
薬を出しておきますので」
「分かりました。
ありがとうございます」
白衣を着たお医者さんに一礼して、その場を出る。
ぐったりとした風花は、本当になんとか歩いているという状態だった。
「……風花、帰ろうか」
「嫌です。絶対に帰りません」
「でも、その身体で今の状況を続けるわけにはいかないよ」
「嫌です、絶対に嫌です。これだけは譲りません。
あたし、ここで帰ったら一生後悔する」
待合室の椅子で、会計を待ちながらも、風花は強情にも頷かなかった。
それどころか俺の手を痛いほど握りしめて、離すまいとしている。
40度の熱があって、これほど力を入れられるものかと思うほどだった。
「………風花。
もういいから」
「何がですかっ!?
なにがいいんですか?!ここまで来たのに!
嫌です、死んでも離れませんっ」
「死んでもとか簡単に言わないの」
熱があるせいかいつもより、少し我が儘になっている風花。
ぎゅうっと俺を握る手が、俺に風花の必死さを痛いほど伝えてきた。
そして、その風邪による高熱も。
最初のコメントを投稿しよう!