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「……後で絶対後悔するよ、風花」
「後悔なんかしません。
飯島くんと離れた方が後悔します」
断言した風花の目は凛としていて、何を言っても無駄なことがそこからありありと伝わってきた。
結局、折れたのは俺の方で。
「朝比奈さん、会計お願いします」
「はい」
受付の人に呼ばれて立ち上がると同時に風花に「分かった」と小さく頷く。
風花はその俺を見て、やっと安心したのか、俺の手から自分の手をゆっくりと離した。
「お会計の方は2592円です」
受付の人の事務的な声を聞きながら、財布からお金を出す。
そこに入れられた杏奈のクレジットカードが電光に反射してキラリと光った。
手に残る風花の体温が熱い。
ひんやりとしたカードに一瞬指先が触れて、そんなことを思う。
あれだけの熱を出していて、どうしてその病状をおくびにも出さないでいられるんだろう。
きっと相当ダルかっただろうに。
それに、さっきの俺の手を握る力。
風花だとは思えないほど強かった。
あんなに細くて、頼りない華奢な風花。
意外な強い一面を見せられて、女ってこういう物なのかなとなんとなく感じた。
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