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「食事は、六時半に」
「かしこまりました」
風花をベッドに下ろしながら必要最低限のことだけを口にすると、ホテルマンは察したようで、俺に頷いてそのまま部屋をでた。
そして再び沈黙が戻る。
静かな部屋の中では、苦しそうな風花の呼吸が嫌と言うほど強く耳に届いた。
「……とりあえずクスリ飲んで」
部屋にあったコップに、もともと持っていた水を入れて先ほど貰ったクスリを何粒か取り出す。
少し頭を持ち上げて、コップを渡しクスリを飲ませると風花が小さく口を開いた。
「…飯島くん」
「ん?」
何かして欲しいことがあるのかと思って、ベッドに身を乗り出す。
風花は上から覗き込む俺のコトを見上げながら、眉をハの字に曲げてポツリと呟いた。
「……ごめんね」
「……」
それはこっちの台詞なのに。
そう思ってもそれを口に出さずに俺はただ頷く。
というかそれしかできなかった。
具合悪いこと気づいてやれなくて、ごめんね。
こんな風にたかが恋愛にこんなに苦労させちゃって、ごめんね。
不安になるようなこといっぱいしてきて、ごめん。
本当は言いたい。
だけど、こんなことを言っても風花はきっと俺を甘やかすから言わない。
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