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好きに生きろ。自由に生きろ。
こんなことを言われる日が俺に来るとは思わなかった。
もう随分前から、俺が鎖に繋がれたままだということは決定事項だった。
飯島家に生まれた以上、この顔に生まれた以上、もうどうしようもない事実。
逃れようのない現実。
それがどういうわけか風花に会って、色のない世界が色づいて。
そしてどんどんこの、銀色に光る自分を繋ぐ鎖が憎らしくなっていった。
自由になりたい。
俺は、俺という人間であって「飯島海」なだけじゃない。
飯島家の息子で、綺麗な顔で、営業の鍵となっていて?
それがどうした。そんなの関係ない。
アイデンティティーは、そこじゃない。
俺が俺であるという、ただそれだけの瞬間を風花が俺にくれた。
真っ正面から、まっすぐな汚れのない目で俺が好きだと何度だって叫んでくれた。
リモコンの赤のボタンをゆっくりと押す。
テレビ画面に表示されたニュースには、飯島家の株価が暴落していることが記されていた。
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